※平行ニコルの顕微鏡写真:全て偏光の振動方向は画像の左右方向(⇔)

ベスブ石 vesuvianite
Ca10(Mg,Fe)2Al4(Si2O7)2(SiO4)5(OH,F)4
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正方晶系 一軸性(−) ω=1.703〜1.752 ε=1.700〜1.746 ω-ε=0.001〜0.008 
Feに富むものは屈折率や干渉色がわずかに高くなる。なお,干渉色は本来,1次の灰〜白だが,褐色や青色の異常干渉色を示すことが少なくない。

色・多色性:無色・淡褐色・淡緑褐色。多色性はあまり見られない。

消光角:柱状や針状のものは直消光。

形態:不定形粒状集合体のほか,短柱状結晶や粒状。時に非常にc軸に伸びた長柱状や針状をなし,これはFeに乏しい場合が多い。

伸長:柱状や針状のものは結晶の伸びに対し負。

へき開:ほとんど認められない。

双晶:認められない。

累帯構造:色や干渉色の違いで認められることがある。

産状
スカルン鉱物として産し,グロッシュラー〜アンドラダイト系ざくろ石・ケイ灰石・方解石・蛍石などと共生するが,ざくろ石やケイ灰石などよりもやや希。
スカルン以外の岩石にはまれで,時にロジン岩に含まれる。



スカルン中のベスブ石  
V:ベスブ石,Gar:アンドラダイト−グロッシュラー系ざくろ石,Wo:ケイ灰石

このような多角形の自形のほか,他形粒状集合体・長柱状集合体をなす。干渉色は1次の灰色程度だが,このように青色や黄褐色の異常干渉色を示し,それによる累帯構造が見えることもある。グロッシュラー〜アンドラダイト系のざくろ石に似るが,ベスブ石は屈折率がやや低く,このように異常干渉色が青色や黄褐色で派手なこともある。ベスブ石は同じくフッ素鉱物である蛍石などと共生することも多い。



スカルン中のベスブ石
V:ベスブ石,Gar:アンドラダイト−グロッシュラー系ざくろ石,Wo:ケイ灰石
長柱状集合体をなすもの。これは異常干渉色が弱く,本来の灰白色の干渉色にわずかにくすんだ黄色の異常干渉色が加わるもの。なお,視野の右側のグロッシュラー〜アンドラダイト系のざくろ石は灰色の干渉色を示し,複雑なドメイン構造になっている。